令和前夜特別句集―平成三十一年間一句集



「令和前夜特別句集―平成三十一年間一句集―」

 平成の時代が終わり、いよいよ令和の時代になるという4月末から10日間の長い連休がありました。
 思い返せば、私は、平成元年の4月からカルチャーセンターで深見けん二先生に俳句の基礎を学び始め、やがて主宰する結社「花鳥来」に入りました。

 令和は5月1日に始まりましたので、現在、私は平成時代と同じで、句歴30年なのだと気づいた時、何か30年の区切りをつけたいと思いました。ちょうど娘も仕事は休みでしたので、この思いを話したところ、「母の日のプレゼントに一年一句の句集を作ってくれる」ということになりました。

 娘は、電子書籍の作り方に興味を持っていて、画像を使ったりなど、試したいと考えていたようです。

 この度、あらきみほ「令和前夜特別句集―平成三十一年間一句集―」になり、ブログでも見ることができるようにしました。
 第一句集『ガレの壺』を刊行して20年近く経ってしまいました。
 第二句集への道のりは自分の俳句に悩んでいた期間でもありました。作品の準備はしていましたが、準備していた400句ほどの中から、一年一句というのは、厳しい選択となりました。

 果たして、「あらきみほ」らしさが出たかどうか、どうぞご覧になって頂けましたらうれしいです。

「令和前夜特別句集―平成三十一年間一句集―」

平成元年
一日をまつ白にして雪が降る

平成二年
背を見せて男のつくる鮟鱇鍋

平成三年
春の鬱こねまはしをりパイの中

平成四年
クロッカス少女の耳をもつときも

平成五年
白鳥の首ふとぶとと諍へり

平成六年
良寛の鞠蹴りあげし夏の月

平成七年
篝火をまあるく越ゆる花吹雪

平成八年
初空のまさをな芯につきあたる

平成九年
寒鴉老マルキストに一句集

平成十年
青邨も又三郎も青あらし

平成十一年
踏んだかもしれぬ四つ葉のクローバー

平成十二年
連凧や男が引きて天が引く

平成十三年
マイセンの欠片や交む鴨と鴨

平成十四年
主留守その夜のからすうりの花

平成十五年
芒原しづかなる日のひるがへり

平成十六年
初日影まつかなスワンよぎりけり

平成十七年
薔薇繚乱といへど莟のまつすぐな

平成十八年
ちちははの道行ならば門火もゆ

平成十九年
犬放つうすももいろの初景色

平成二十年
富士山へ筑波山より御慶かな

平成二十一年
極月や小面にある穴五つ

平成二十二年
鴉ゐて阿呆あはうと花の昼

平成二十三年
水温む水の底より泡ひとつ

平成二十四年
春眠のはは勾玉のかたちかな

平成二十五年
地の影に一蝶の影まぎれけり

平成二十六年
牡丹から牡丹へ虻もてふてふも

平成二十七年
秋と書く一字ひたすらうれしかり

平成二十八年
蝶飛んできてガレの草ガレの花

平成二十九年
ひいふうみい七種粥へ畑のもの

平成三十年
よその子の声にふりむき虹二重

平成三十一年
真つ白といふ花の闇おそろしや