第七百七十四夜 中川宋淵の「寒の入」の句

2022年の寒の入りは1月5日で、この日が小寒にあたり、 2022年の寒中は、1月6日~2月3日までとなるという。小寒と大寒をあわせた期間は、「寒」「寒中」「寒の内」などと呼ばれ、小寒の初日は「寒の入り(かんのいり)」ともいわれる。

 守谷でも初雪は、「寒中」の1月6日に降った。この日は「千夜千句」の七百七十夜で、、正岡子規の病中吟の「いくたびも雪の深さを尋ねけり」を含めた雪の4句を紹介している。
 昨日は珍しく暖かな日であったが、今日はまた雨も降ったり止んだりの寒い日となって、暫くは「寒の内」となる。だが春はもう直ぐ、近くなっている。
 
 今宵は、「寒の入」の作品を紹介しよう。

■1句目

  山山の性根あらはす寒の入り  中川宋淵 『現代俳句歳時記』角川春樹編
 (やまやまの しょうねあらわす かんのいり) なかがわ・そうえん

 性根には、「しょうね」と「しょうこん」の読み方がある。
 性根(しょうね)と読めば、根本的な心の持ち方や心構えであり根性(こんじょう)のことである。一方、性根(しょうこん)と読む場合には、根気(こんき)であるという。なかなか難しい!

 中川宋淵さんは、寒の入りの頃に眺めた、枯れきった地肌と黒々とした幹だけの冬山を「性根(しょうね)」があると捉えた。
 句意は、素っ裸を見せている山山を、根性の座った山であると見抜いた、ということになろうか。

■2句目

  すべり台児は頭から寒に入る  萩山栄一 『現代歳時記』成星出版
 (すべりだい こはあたまから かんにいる) はぎやま・えいいち

 「寒の入」の例句に、このような詠み方の作品に出合った。普通の子どもたちは、すべり台からお尻をつけて両足を前に出して、両手をすべり台の手すりに捕まって滑ってくる。
 ところが、この児は違った。頭を前にして逆さまに落ちる格好で、すべり台から降りてくるではないか。今日は寒の入りで、一年中で1番寒い日々の始まりの日である。
 
 この男の子は、すべり台で逆さまになって、自分からすっぽりと寒にすべり込んでいくようであった。

■3句目

  からからと寒が入るなり竹の宿  高浜虚子 『現代俳句歳時記』角川春樹編
 (からからと かんがいるなり たけのやど) たかはま・きょし

 季題を重視している高浜虚子は、季題「寒に入る」ではなく「寒が入る」と、助詞の「に」を「が」に替えて詠んだ作品である。
 
 句意はこうであろうか。虚子が泊っている宿は、一面の竹林に囲まれていた。寒風が吹くと竹林はからからと音を立てて打ち合っている。寒風が竹林に入り込んでゆく音が「寒が入る」であり、虚子の受け止めた音であった。助詞は「が」でなければならなかったのだ。私は、驚きながらどこか新鮮味を感じた。