虚子研究俳句ノート2巻『俳句は生きている』序文

 序 文――俳句は生きている
                            あらきみほ
 
 平成十一年から平成十六年までの六年間、ささやかな新しい試みとして、週刊のインターネット上のメールマガジン「つれづれ俳句」(主宰・あらきみほ)を配信していました。
 経営していた出版社の蝸牛社ではその頃、テーマ別アンソロジー『秀句350選』、古今東西の俳人の作品と鑑賞による『蝸牛俳句文庫』、俳句と随筆による『俳句・背景』というシリーズを刊行しておりました。
 
 私は編集者として俳人の方々とお会いする機会があり、俳誌や句集や俳書に触れることがありました。書籍の編集では芭蕉から子規、虚子、碧梧桐、蛇笏、秋桜子、草田男、草城、たかし、井泉水、万太郎などの作品に触れ、現代に活躍している多彩な俳人の作品に触れ、さらに子ども俳句の世界も触れることができました。
 その中で、有季定型の十七文字も、無季の句も、短詩も、それぞれの俳人たちが命を削るようにして精魂を傾けた言葉であることに気づいたのでした。
 どの時代でも名句といわれる作品は、時代の喜びと哀しみに溢れていて、心惹かれる俳句でした。そこには流派を超えて、繙けばいつだって「新鮮に心に響いてくる、生きている」作品があったのです。
 
 野の草花たちが力の限り工夫をして、根を張り水を得、葉によって太陽から栄養を得ながら、したたかに生き抜いて花を咲かせるように、俳句の十七文字たちも、活き活きとした様相を伝えてくれています。
 
 本書は、メールマガジン「つれづれ俳句」を、楽天市場経由で発行した六年間、およそ120回、毎週のように書き綴ってきた原稿からの抜粋です。
 Ⅰ章・俳句の風景(季題の話、映画、観劇など)
 Ⅱ章・俳句界、俳人紹介、俳人追悼、句集紹介、俳誌紹介、俳書紹介
 この度一巻の書籍にするに当り、六年間の文章を上のような項目に分類しました。抜粋した原稿は、全体の半分ほどで、順不動ですが、ほぼ当時のままの形で掲載しています。
 
 この十五年前に書き終えた「つれづれ俳句」には、所属する俳誌「花鳥来」に掲載された私の原稿の、虚子研究および当時活躍中の俳人の句集評なども一部転載させて頂いております。
 最後の項目として、深見けん二師の教えの一つを加えました。

   令和元年八月二十二日