今宵は2度目となるが、中経出版刊の『名句もかなわない 子ども俳句170選』から秋の句を紹介してみよう。
台風がいねのドミノをたおしてく 小5 小関正憲
下段に書いた、あらきみほの短文である。
「ノンちゃんのお母さんは、台風で大きな木がゆれるのをながめているとわくわくしてきます。
ある年、利根川の増水で川沿いの稲田はすっかり水没して、湖のようになってしまいました。
それからは、「台風をみるのが好き」などとはいいません。水が引いたあと、稲がたおれて泥にまみれた姿は、とてもかわいそうでした。」
小関くんの作品のうまいなあと思ったところは、「ドミノ倒し」というゲームの言葉を俳句に入れることができたからだ。
「ドミノ倒し」の遊びは、多数のドミノの札(牌(はい))を立てて並べ、端から将棋倒しに倒していくという遊び。倒れた札でさまざまな図形を描く。
台風の風の強い力が稲をつぎつぎになぎ倒していく稲田の姿が、眼前に見えるように表現できたからだ。ニュースで見たことがあるが、一方向でなく、輪となってなぎ倒されている稲田もあった。
今年の台風10号は、「いままで経験したことのない規模の台風」と言われ、台風の順路の地方は、準備万端整えて台風の通過に備えた。予報では920ヘクトパスカル、最大瞬間風速70メートルなど、どんなことになるのだろうと日本中が不安の数日を過ごした。
だが、川の氾濫はどうしようもないが、早めに安全な場所に避難したことで、人災は大幅に避けることができた。
もう一句は、「すすき」の句である。
すすきのほ帽子にさして騎士となる 小5 関谷直子
芒の穂の、片側へなびく形は帽子の飾りによく似合う。とってもお洒落な作品である。クラスの男の子、それともお兄ちゃん、それとも、日本人は帽子を常に被るという習慣はないから、外国の映画か童話の主人公かもしれない。
子ども俳句には、時に、大人には生まれにくい思い切った発想があった。
そしてもう一つ、ハイクアートの創始者の八木健さんの作品が加わった一書であったことである。
八木健(通称やぎ・けん)さんは、NHKの元アナウンサーで、松山局が『BS俳句王国』を制作することになった際、その企画立案に加わり、初代主宰(司会者)として活躍した。名物司会者であった。
じつは私は、平成12年12月の『BS俳句王国』に出演させて頂いている。人前に出るのが苦手な私だが、今でも楽しかったという思い出となったのは、八木健さんの、前日の本番前から本番、打上げまでのじつに細やかな心配りがあったからであった。
その後、ハイクアート作家であることを知って、本書の登場となった。