第三百五十四夜 火箱遊歩と2人の「ハロウィン」の句

 今日は、11月1日の「万聖節」の前夜祭。かつてはカトリック教会の祝日の1つで、万聖節の夜は日没から1日が始まるとする文化である。ことにアメリカに根付いた祭日で、日本にはアメリカ文化とともに入ってきた。
 カボチャをくり抜いてその中に灯しを入れるとお化けのように見える。カボチャの被り物をするのは魔女になるため。子どもが扮した小さな魔女たちは、家々を訪れては「trick or treat(いたずらかお菓子か」と言うと、家の人はお菓子をくれるという。もはやハロウィンの儀式のようになっているが、最近では、会社帰りの大人も大いに楽しんでいる。
 
 夫が畑から、ちょうど採れたてのカボチャを抱えてきたので、カボチャの目と口に彫りを入れて、魔女に見立てて夕食の大皿の真ん中に置いた。うーん、かわいい! なんだか昔を思い出した。ハロウィンの俳句を探しているうちに遊んでしまったのだ。
 
 今宵は、ハロウィンの俳句を紹介してみよう。

  校庭にハロウィンの魔女集合す  火箱遊歩「船団」

 今年のハロウィンの10月31日は土曜日である。子どもたちは日付どおりにハロウィンを行うが、大人の場合は当日の夕方に行うとは限らない。会社帰りに皆が集まって遊ぶ週末にハロウィンを行われることが多い。
 掲句は、放課後に扮装をした魔女たちが集合して、これから近所の家を回って歩くというのだろうか。魔女たちが次々と校庭に集まってきている。「校庭に集合」とあるから、きっと小学生、たぶん夕御飯前には帰宅できるように、先生たちも承知の上での行動のように感じた。
 火箱遊歩さんは「船団」の会員。第3句集『えんまさん』より俳号を「遊歩」から「ひろ」に改名されたという。

  ハロウィン呪文のたびに菓子増ゆる  岩坂満寿枝「麻」

 中七の「呪文のたびに」の呪文が「trick or treat(トリックオアトリート)」である。「いたずらしちゃうぞ、さもなければ、お菓子をちょうだい」は、たしかに呪文というか、可愛らしいけれど脅し文句のようである。
 まさにハロウィンの、明るい楽しさ、無邪気さが伝わってくる言葉であると思った。
 たとえば、国民的祭日のアメリカやカナダでは、いつ小さなお客が玄関をノックしても、配るお菓子の準備はできていることだろう。もしお菓子が袋いっぱいになったらどうするかって? 小さな子は家に帰るだろうし、大きな子たちは、どこかに集まって一騒ぎするかもしれない。
 岩坂満寿枝さんは、嶋田麻紀主宰の「麻」で活躍され、しばらく前に「ここで俳句はお終い」と、自ら決意して退会されたという。
 
  抱へ来し包み開けばハロウイン  山田弘子「円虹」

 先代の「円虹」主宰であった山田弘子さんは、神戸に住んでいらした。坂道を重い荷物を抱えて帰宅した弘子さんが、包を開けると、まあハロウィンのお菓子や飾りが出てくるは出てくるは・・。
 日本では、アメリカやカナダのようではなく、ハロウィンは、クリスマスのように室内を飾りご馳走を作り、時には人を招いてパーティーをするのだろう。