第七百二十四夜 大橋桜坡子の「七五三」の句

 蝸牛社の企画した出版物の中でも、編集者として私が楽しんだ書籍が、『子ども俳句歳時記』『小学生の俳句歳時記』『名句もかなわない子ども俳句170選』であった。
 
 今回、読み返してみると、1冊目の『子ども俳句歳時記』の作品のじつに膨大であったこと、作品を集め、選をしてくださった石寒太、倉田紘文、山崎ひさを、水野あきら、吉野孟彦の諸先生がこれまで関わってきたお力の全てを出してくださっての書であった。
 炎天寺住職の吉野孟彦先生は「一茶まつり」「全国小中学生俳句大会」の主宰。水野あきら先生は、日本学生俳句協会事務局長。倉田紘文先生は、大分県で「豊っ子俳壇」を主宰。他の先生方も子ども俳句の指導や大会選者として活躍されている方々である。
 
 この1冊が大きな基盤となって、『小学生の俳句歳時記』『名句もかなわない子ども俳句170選』を制作することができた。私自身も、「インターネット・ハイクワンダーランド」を主宰していた。
 
 『小学生の俳句歳時記』の発刊後、驚いたことに、作家の松岡正剛氏がご自身のブログ『千夜千冊』で書いてくださった。また、新聞の記事にしてくださっていた。こんな褒め言葉は初めてなので、次に1部を紹介させて頂くことにする。
 
 『子ども俳句歳時記』という有名な本があって、そこにもびっくりする句が多かったが、この本の句もすごい。あらきみほのナビゲーションも絶妙・・。
 ・・あまりの出来に降参するというより、しばらくはいったい自分が何をしてきたのか、しばし絶句するというか、放心するにちがいない。――

 今宵は、『子ども俳句歳時記』『小学生の俳句歳時記』『名句もかなわない子ども俳句170選』の中の「七五三」の作品を紹介してみよう。3冊の書には、子ども俳句も俳人の作品も収録されている。

■1句目

  母と子とまれに父と子七五三  大橋桜坡子
 (ははとこと まれにちちとこ しちごさん) おおはし・おうはし

 掲句は、神社へ七五三のお参りしているのはお母さんと子ども連れがほとんどだが、たまに、お父さんと一緒に参っている子もいましたよ、なろうか。
 
 今日は、七五三に参る神社まで遠回りしてみようとしたが、守谷も取手も着飾った親子を見かけることはなかった。昨日は14日の日曜日、家族が揃っている日に済ませたのであろう。中七の「まれに父と子」とは、お母さんのいない家庭、それとも小さな赤ちゃんがいてお母さんは外出できないのであろうか。

■2句目

  いつもよりみんなきれいだ七五三  北山純子 大分県福良ヶ丘小 5年
 (いつもより みんなきれいだ しちごさん) きたやま・じゅんこ

 この作品は、『子ども俳句歳時記』の季題「七五三」の例句であった。大分県の北山純子さんが、倉田紘文先生の主宰する「豊っ子俳壇」に出した作品であろう。  
 北山さんは5年生なので11歳。町を歩けば七五三の子どもたちは、女の子は着物や洋服姿、男の子は袴着やスーツ姿であったかもしてない。
 でも、みんなお洒落しているから、いつもよりお澄ましして、みんなきれいだったよ、という句意となろうか。

■3句目

  七五三飴も袂もひきずりぬ  原田種茅
(しちごさん あめもたもとも ひきずりぬ) はらだ・たねじ

 この作品は、『名句もかなわない子ども俳句170選』の中で、筆者あらきみほが文章を付けたので、転載しよう。
 
 「ノンちゃんが3歳の七五三のときのことです。神社で買ってもらった千歳飴の袋は大きくて、すぐに砂利道をひきずってしまいます。たいせつな袋ですもの、自分でもっていたくて一生懸命もちあげて歩きました。
 ついにお父さんは、おばあちゃんお手製の白いケープ付きのロングドレスのノンちゃんを飴袋ごと抱きあげました。」