第七百六十夜 橋本夢道の「クリスマス」の句

  クリスマス       ニューヨーク・サン紙社説
  
 サンタクロースがいない、ですって!
 サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのとおなじです。
 ためしに、クリスマス・イブに、パパにたのんでたんていをやとって、ニューヨークじゅうのえんとつをみはってもらったらどうでしょうか? ひょっとすると、サンタクロースを、つかまえることができるかもしれませんよ。
 しかし、たとい、えんとつからおりてくるサンタクロースのすがたがみえないとしても、それがなんのしょうこになるのです?
 サンタクロースをみた人は、いません。けれども、それは、サンタクロースがいないというしょうめいにはならないのです。
 この世界でいちばんたしかなこと、それは、子どもの目にも、おとなの目にも、みえないものなのですから。
   (『サンタクロースっているんでしょうか?』中村妙子訳 偕成社より)

 今宵は、12月24日クリスマス・イブ。「聖夜」の作品を見てみよう。
 
■クリスマス

  ほらねクリスマスの七面鳥を目でみなさい  橋本夢道 『橋本夢道全句集』
 (ほらね くりすますのしちめんちょうを めでみなさい) はしもと・むどう

 橋本夢道は、1903年(明治36)- 1974年(昭和49)は、徳島県出身の俳人。自由律の俳人として知られ、プロレタリア俳句運動の中心人物の一人として活動した。
 
 掲句は、夢道の代表句の1つ。実際に貧乏であったかどうか知らないが、クリスマスになって、焼いた七面鳥をテーブルにどんと置いてあげられないお父さんを想像する。
 子どもの手を引いて、肉屋のウィンドウに飾ってある七面鳥を見せた。「ほら、これが七面鳥だよ。」「しっかり目でみておきなさい。」と言ったという。
 
 他に、〈妻よおまえはなぜこんなにかわいんだろうね〉〈無礼なる妻よ毎日馬鹿げたものを食わしむ〉などがあり、大好きな作家である。

■サンタさん

  サンタさんその一言で子はよい子  あらきみほ 『ガレの壺』
 (サンタさん そのひとことで こはよいこ) あらき・みほ

 「お母さん、ぼくのところにもサンタさんはきっとくるよね。」 いたずらっ子のタロくんは、今夜は心配でたまりません。
 「世界中の子どもにプレゼントをくばるのだから、サンタさんはおおいそがしね。お祈りをわすれないで寝るのよ。」と、少しだけプレッシャーをかけたお母さんでした。
 「ねえ、ママ。わたしサンタさんってだれだかわかったみたい!」と、4年生になったお姉さんのノンちゃん。
 
 でも、タロくんもノンちゃんも2人とも、ツリーに大きな袋をさげていました。
 もちろん、お母さんは子どもたちが寝静まったころに、子どもたちが口々に願っていたプレゼントを袋に入れておきましたよ。