第九百八夜 赤坂誠治くんの「父の日」の句

 今日は6月の第3日曜日の「父の日」である。「母の日」を楽しく終えて、うっかり忘れそうになるのが父の日。でも娘がちゃんと覚えていてくれて、「うちのクマさんに何をプレゼントしようかな?」と、私に相談するでなく呟いていたが、クマさんことお父さんに、ちょっと上等のウイスキーを買ってきたようだ。

 父の日も母の日と同じで、アメリカから起こったもので、1940年にドッド夫人が、6月の第3日曜日を父に感謝する日にしようと提案したことから、日本にも父の日が移入された。母の日の起源は1908年の第2日曜日に教会で赤いカーネーションを配ったことに始まっていたが、当然父の日もあるべきであるとして、行われるようになったという。
 威張っていた日本のお父さんも、照れくさいと感じながらも、今ではすっかり「父の日」に慣れているようである。

 今宵は「父の日」の作品を見てみよう。
 

  父の日やだまつて父の肩たたく  小6 赤坂誠治 『名句もかなわない子ども俳句170選』あらきみほ編
 (ちちのひや だまってちちの かたたたく) あかさか・せいじ

 「お父さんは、テレビばっかり!」と、子ども。
 「主人は、いつも家では不機嫌なのですよ!」と、お母さん。
 外でのお父さんは、にこやかに仕事をしているし、笑ってお話しているし、朝早く電車で会社に行って、ときどきはお酒を飲んで帰ってくるけど・・。
 お父さんがとてもくたびれていることを知っているタロくんは、夕御飯のあと毎日、100まで叩いてあげるね、とお父さんの肩を叩きはじめた。
 
 ところがである。
 「96、97、98・・」と順調に大きな声で数えながら肩を叩いていたタロくんは、「99」と言ったところで、「アレッ、ねえ、パパ、99の次はいくつなの?」と訊いたのだ。
 
 お父さんは、肩の疲れがまだ取れていないこともあったのか、イタズラ心が動いたのか、「78だよ!」と言った。タロくんは、また大きな声で「79、80・・98、99・・、ねえ、パパ、次はいくつなの?」と訊いてくる。三度目も同じ質問するから同じように答えたら、「あれっ、また78なの? さっきも78だったよ!」と言う。
 「じゃあ、タロ。もう一回やってみよう!」
 「うん」
 「・・98、99、この次はなんだっけ・・?」
 「99の次は100だよ! がんばったね、タロくんは100まで数えることができたね!」
 こうして、タロくんは無事に100まで覚えることができたし、お父さんの肩もようやくほぐれてきた。