第九百八十九夜 木代ほろしの「体育の日」の句

 一昨夜は10月8日で見事な十三夜の月を見た。昨夜は夕方近くから土砂降りとなり、今宵の10月10日は、午後には晴れてきた。夕方の散歩では大きな月が地平に赤く見え、夜の散歩に出たときには月は真上にのぼっていて、願った通りの美しい満月となった。
 
 そして本日10月10日は、令和2年に、休日の「体育の日」が「スポーツの日」と変更された日でもある。2000年(平成12年)から、国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成10年法律第141号)によって「ハッピーマンデー制度」が適用され、体育の日は10月の第2月曜日となった。土日月の3連休は、旅行でも親孝行でも誰にとっても何をするにも有難い。
 令和4年は、8日9日につづき10日の「スポーツの日」を含めた3連休となった。

 今宵は、「体育の日」の作品を見てみよう。
  

  体育の日も祝日よ国旗立て  木代ほろし 『ホトトギス新歳時記』
 (たいいくのひも しゅくじつよ こっきたて) きしろ・ほろし

 掲句は、国民の祝日には必ず国旗を立てている。前日になると、仕舞ってある箪笥や仏壇の抽斗から出して、準備をしている様子が、作品から見えてくる。

 長崎の夫の実家では、祖父が県の校長会の副会長という役職柄か、国旗は必ず立てていた。
 東京では、体育の日に国旗を立てている家をあまり見たことはないような気がしている。祖母の箪笥にも父母の箪笥にも国旗は畳まれて上段の抽斗に仕舞ってあったが、外に立てているのを見たことがなかった。また、今もそのまま仕舞ってあるが、私たちも国旗を立ててはいない。


  孫とはこれか総身「小さき運動会」  中村草田男 『現代歳時記』成星出版
 (まごとはこれか そうしん ちさきうんどうかい) なかむら・くさたお

 小学一年生の平均体重というのはおよそ20kg位である。草田男が還暦の時に生まれた初孫の、一年生の運動会に行った時のことであろう。
 徒競走で懸命に走っている孫を見て、孫とはこういうものか・・孫は小さな身体全身をつかって総身で、運動会に参加している・・何と小さいことよ、何と健気なことよ・・まさに「小さき運動会」のようだと、草田男は思った。
 
 総身「小さき運動会」は、草田男ならではの表現と言えようか。


  人妻をむんずと借りて運動会  太田寛郎 『現代歳時記』成星出版
 (ひとづまを むんずとかりて うんどうかい) おおた・ひろお

 運動会で行われる種目で、生徒も先生たちも観に来た親たちも参加しての「借り物競走」である。テープカットの寸前に、走者一人一人に紙切れを渡す。そこには、走者が観客席から借りてくる品が書かれている。
 
 「ハチマキ」くらいならいい。
 「お母さん」も大丈夫。
 「先生」も大丈夫。
 「好きな人」は、困ってしまう。
 
 「人妻」・・お母さんも人妻なんだけどな! 他人のお母さんならいいのかなあ!
 確か、ゴールした後で、紙切れと借りてきたものを、観客の前で見せなくてはならかった! 拍手が「合格」の証であった。