「寒」は、小寒の1月5日頃から、大寒の1月21日頃をへて、節分(立春の前日)までのおおよそ30日間をいう。この間を「寒の内」といい、一番寒さのきびしい頃である。
今日は1月30日。犬の綱を引く私は「さむい、さむい!」と言いながらも、お隣のおじさんやお婆ちゃんに元気よく尻尾をふって挨拶してゆく犬のノエルと毎朝の散歩をしている。
今日は娘の仕事のない日曜日! 「ノエル! ドッグランに連れていってあげようね!」と、守谷市の四季の里公園を一巡りしてから、今日の目的地のドッグランに出かけた。ここならノエルは思い切り走り回ることができる。眺めていると、犬の目線はつねに飼主に向けられ、飼主の視線は勿論愛犬に向けられている。
娘と私は喫茶ドッグカフェでハンバーガー&ナゲットの軽いランチを食べながら、駆け回っている犬たちを眺めている! ナゲットとポテトの塩加減のすばらしかったこと! しあわせな時間であった。
■「寒」の作品を見てみよう。
1・からからと寒が入るなり竹の宿 高浜虚子 『現代俳句歳時記』角川春樹編
(からからと かんがいるなり たけのやど) たかはま・きょし
季題を重視している高浜虚子は、季題「寒に入る」ではなく「寒が入る」と、助詞の「に」を「が」に替えて詠んだ作品である。
句意はこうであろうか。虚子が泊っている宿は、一面の竹林に囲まれていた。寒風が吹くと竹林はからからと音を立てて打ち合っている。寒風が竹林に入り込んでゆく音が「寒が入る」であり、虚子の受け止めた音であった。助詞は「が」でなければならなかったのだ。私は、驚きながらどこか新鮮味を感じた。
2・寒燈下小諸百句の黄の表紙 深見けん二 『菫濃く』以後
(かんとうか こもろひゃっくの きのひょうし) ふかみ・けんじ
深見けん二は、平成26年には『小諸百句』の復刻版、さらに『小諸百句』から100句を選んで解説を書いた『続小諸百句』を、市立小諸高浜虚子記念館より刊行した。確かに、黄色い表紙であった。
この平成26年には、句集『菫濃く』により、第48回蛇笏賞を受賞された。
「花鳥来」の結社の私たちは、どんなに嬉しかったことか!
けん二先生は、ご自身の著書は句集であれ虚子関係の書籍であれ、出版されると会員の私たちに贈呈してくださった。また俳人のお仲間にも贈呈されていたに違いない。けん二先生のお心は、虚子のことを学んで欲しい、「客観写生」「花鳥諷詠」を学んで欲しい、この3つのことが俳句の基本なのであるから、というお気持ちであったと思う。
私たちは、虚子の道を歩み続けてきたけん二先生の弟子であるのだから、しっかり学び続けよう。
■みほの「寒」の句
3・天と地の約束ごとや寒に入る あらきみほ
(てんとちの やくそくごとや かんにいる)
日本のこの時期は大自然の定めとして、一年で一番厳しい寒さの一月に「寒」の文字を当てたのであった。天も地も約束をたがえることはないが、やっぱり寒いなあ、という気持ちを詠んでみた。
4・朝六時かわかわ鳴くは寒鴉 あらきみほ
(あさろくじ かわかわなくは かんがらす)
鴉の鳴き声を「かわかわ」と、一番最初に俳句に詠んだのは、「ホトトギス」主宰の高浜虚子であった。
虚子は昭和3年、「俳句は花鳥諷詠詩である」という俳句の理念を提唱した。「花鳥」は花鳥風月を縮めたもので「自然」を代表させたものであり、「諷詠」は調子を整えて詠う、賛美するの2つの意味が籠められている。