第二十四夜 木村虹雨の「仏の座」の句

 この頃は、77歳の喜寿を過ぎた私たちのメル友とのやりとりが、大リーグの大谷翔平の話題にまで飛ぶことも多い。それが特に野球好きの友人というのではなく、「今日はいい天気ね! 青空がきれいだったわ! 今日の大谷はホームラン2本もよ!」などと、誰にも挨拶のようになっているところが凄い!
 今日は、大学時代からの親友から大谷翔平の全身の写真が送られてきた。どうやら羽田空港でアメリカから乗った同じ飛行機から出てきた大谷翔平のスナップ写真のようであった。当たり前と言えば当たり前だが、大谷翔平はテレビで見るのと変わらず大きくて優しい顔をしていてカッコ良かった!

 夫はずうっとテレビの前に陣取っているけれど、私は自分の部屋のパソコンの前にいるから、野球も、夕方のニュースで結果を見ているが、夜の友とのやりとりは出来ている。

 今宵は、野原で見かける「仏の座(ホトケノザ)」の俳句を紹介しよう。

 1・女童の手がかしこくて仏の座  木村虹雨
 (めわらわの てがかしこくて ほとけのざ) きむら・こうう

 この作品の素敵なところは、中七であろう。「かしこい頭」とは言うけれど「手がかしこくて」は、私が初めて知った表現であった。
 女童とは幼い女の子。私も長女が幼かった頃には、なにか一つできると、「かしこいわね!」「おりこうさんね!」と褒めていた。褒めるときはお母さんである私は、きっと優しい顔と声であったと思う。

 下五の季語の「仏の座」は、お正月の七草粥に入れる7つの野草の一つである。この野草たちが花をつけるのは丁度今頃・・今日も近くの野草を見ては「これがホトケノザかも・・」と思いながら犬と散歩した。
 
 2・たびらこや洗ひあげおく雪の上  吉田冬葉
 (たびらこや あらいあげおく ゆきのうえ) よしだ・とうよう

 「たびらこ」はホトケノザとも言い、春の七草の一つである。お正月飾りにしたり、七草粥に入れたりするので、摘んでくると川原や井戸水で土を落としてよく洗い上げては雪の上に置いたのであろう。その後はザルに入れて持ち帰って正月の一品になる。

 3・打ち晴れて富士孤高なる仏の座  勝又一透
 (うちはれて ふじここうなる ほとけのざ) かつまた・いっとう

 富士山が好きでドライブが好きで、東京の練馬に住んでいた頃は車で環状八号線から20号線、東海道線にのって河口湖へよく出かけた。徐々に距離は伸びて、富士山の裏側を走って一廻りして東海道を走って帰宅した。若くて子どもが生まれる前は、私が運転手・・子どもが生まれると横の夫は赤ん坊の世話係になってしまう・・気づいた夫はやおら運転免許を取ることに決めた。
 掲句の中七の「富士孤高なる」がいい。日本一の3776mの高さの山である。

 勝又一透は、明治40年静岡県の生まれ。富安風生門。『岬』を主宰。句集に『青富士』がある。