第二百十一夜 穴井太の「蟬」の句

 平成7年(1995)刊行の『蝸牛 新歳時記』の編集作業の折、天文の季語「秋」に置かれた〈秋を病みやさしくなるは恐ろしき〉の句を見た瞬間、心にすとんと何かが響いたことを覚えている。当時、北九州市で俳誌「天籟通信」を主宰さ...

第二百九夜 檜 紀代の「埋火」の句

 今宵は、檜紀代さんの『花は根に』から紹介させていたくことにする。本書は、蝸牛社の「俳句・背景」シリーズの14人目。33のテーマによる俳句と随筆のコラボレーションの中で、心の内を他人には覗かせないという作家もいれば、間近...

第二百七夜 大牧 広の「春の海」の句

 大牧広氏の編著に、『秀句三五〇選 港』(蝸牛社刊)がある。あとがきには、「この三五〇句を鑑賞するに当たっては単なる客観に終始するのではなく、あくまで〈人の世の港〉という座標軸を据えて書くべきだと思っていた。」と、書かれ...